アナルセックス!(挨拶) 

突然だが、BLがたくさんありすぎて、どれから読めばいいか悩んで寝込んでしまった子は、いないじゃろうかー?
そんな可哀相な子たちのために、今日も、個人的なオススメを紹介していくぞー。 

 

個人的なことで恐縮だが、私の名刺には「Favorite:武将・老人・年下攻め・メガネ」と書いてある。
肩書よりも名前よりも先に、伝えたいことがそれだからだ。
そんな私の萌えスカウターの数値が、今回、上がりすぎて爆発するほどの作品が来た。

□■『ブルーとグレーのあいまで(著:糸井のぞ)』■□


□■ニッチな世界”シルバーラブ”■□

糸井のぞ先生の『ブルーとグレーのあいまで』。

シルバーラブ(中高年~ご老人がメインカップリングの少なくとも一人であるBL)を好む人は、とりあえず読む用、保存用、布教用に3冊買ってほしい。そうでない人も、とりあえず読もう。シルバー要素が仮になかったとしても、素晴らしい作品だからだ。


ところで「シルバーラブ」というのは、私のような愛好者たちがたまに提案しているだけで、BL内でも、ジャンルや嗜好の一般的名称として確立してはいない。

BL全体から見てそれほどはポピュラーでない、ありていに言ってニッチな嗜好だ。


第1回に続いてまた特殊なものを取り上げてるなこの人、というのがこの時点でバレたが…
しかし、特にカップルのうち老人側が「受け(セックスの時に挿入される・させる側)」であり、なおかつ心情が繊細に描かれるシルバーラブ作品は、BLジャンル以外では、なかなか見つからないと思う。

老人受けの世界は、「中高年または老いた男性と、それよりも若い女の恋愛」という渡辺淳一的世界とは、かなり趣が異なる。
ニッチではあるが、「女体ではないものにも性的魅力を見出そうとするジャンル」という意味での、BLジャンルの一つの可能性を最も凝縮しているテーマだと思う。

この作品について、特に注目してほしいところが二つある。
一つには、お菓子研究家でマンガにも詳しい福田里香さんが、マンガのさまざまな歴史的局面で提唱するところの
「画力の発明」だ。

若さが美しさや性的魅力と同視される価値観の強い世界で、老人を老人らしく描き、なおかつ読者に色っぽいと思わせるのは難しい。

しかし「老いの美しさ」を追求する作家たちが、それを可能にしてきた。

BL周辺では、西炯子先生、雲田はるこ先生、西田東先生、鈴木ツタ先生、basso先生ら様々な描き手をすぐに思い出すことができるが、糸井のぞ先生もまた、今作で(私の個人的なピックアップだが)その列に加わった。

今作で描かれる、おそらく57歳の、老いた男性の顔の深い皺、枯れ木のような指、彼が年甲斐もなくとりみだす顔、恥じらう顔に注目してほしい。

 

今作のもうひとつの注目ポイントとして、巧みなストーリーテリングが挙げられる。

謎めいたタイトルにも暗示されているが、この作品のメインの語り手は、カップルの二人のうちどちらでもない。

BLではよく起こる男三角関係のうちの一点、ではあるのだが、その役割もそれほど重要でない。

 だが単なる傍観者ではなく、この男性もまた自分の夫婦関係について(カップルの二人以上に)悩み、決断を迫られ、考えを変化させていく。

限られた紙幅で三者三様(語り手の妻も入れるとするなら四様)のドラマを描ききる手腕には、圧倒させられる。

BLが多すぎて、どれを読めばいいか悩んで寝込んでしまう前に、良い子はぜひ『ブルーとグレーのあいまで』を読んでほしい。


次回もBL、ゲットじゃぞ!






著者:金田淳子
ボーイズラブ・やおい・同人誌研究家。
1973年富山県生まれの永遠の17歳。
東京大学に学部生、院生時代を含めて15年ほど通っていた廃人。
共著に『文化の社会学』(佐藤健二・吉見俊哉編著、有斐閣、2006年)、
『オトコのカラダはキモチいい』(二村ヒトシ、岡田育、金田淳子共著、KADOKAWA、2015年)などがある。